第6回(2016年) 富澤基金による研究助成の審査経過・結果報告

基金運営委員会委員長 山本正幸

 「日本分子生物学会若手研究助成富澤純一・桂子基金」による第6回研究助成の最終審査を5月14日に行い、6名の方々に助成を決定いたしました。応募者は115名、お名前からの推定で男性96名、女性19名でした。書面審査により12名の方をヒアリングにお招きしましたが、1名の辞退があり、11名についてヒアリングを実施しました。研究内容および研究環境等について伺った結果、助成対象者として男性4名女性2名を選びました。
 これまで通り審査過程で性別に配慮することはなく、特定の立場を優先したということもありません。ただし、当基金の目的とするところは、分子生物学、あるいはさらに広く生命科学の新しい展開を目指す研究を志しながらも、研究費の欠乏や生活上の制約のために十分に力を発揮できていない若手研究者に、使途を限定しない助成を行って、研究の発展を可能にさせることです。換言すると、研究内容が高度な提案であっても、他の研究資金でその大半は実行可能というような場合には、助成の必要度は低いと判定される傾向にあります。この方針は今後とも堅持されますので、応募される方はご留意ください。
 審査過程では応募者が日本分子生物学会会員か否かは非開示でしたが、結果的には助成対象者6名のうち4名が会員、2名が元会員でした。ヒアリングを行った11名の方(男性8名女性3名)については8名が会員、2名が元会員、1名が非会員でした。
 基金運営委員会および分子生物学会事務局では、使途を限らない本助成の特色を活用した、創意に富んだ研究推進提案を歓迎いたします。来年度以降も優れた研究を掲げて奮ってご応募ください。

以上

「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子基金」基金運営委員会
委員:山本正幸(委員長)、小原雄治(副委員長)、荒木弘之、上村 匡、大杉美穂、近藤 滋、塩見美喜子、東山哲也

■第6回(2016年)日本分子生物学会 若手研究助成の助成対象者
(氏名・所属機関・研究題目)50音順

○大谷美沙都(奈良先端科学技術大学院大学)
植物のロバストな細胞形質発現を支えるRNAを介した環境応答システムの解明
Environmental response system mediated by RNA for robust expression of cell function in plants

○大畑樹也(浜松医科大学)
転写にともなう条件的ヘテロクロマチン形成機構の解明
Understanding the mechanism of facultative heterochromatin formation mediated by transcription

○尾﨑省吾(Focal area of Infection Biology, Biozentrum, University of Basel)
バクテリア細胞周期を駆動する遺伝子群が織りなすネットワーク
Uncovering genetic interactions driving the bacterial cell cycle.

○倉石貴透(金沢大学医薬保健研究域薬学系)
ショウジョウバエモデルを用いた無菌的な自然免疫活性化機構の解明
Sterile activation of innate immune signaling in Drosophila larvae

○島田裕子(筑波大学生命領域学際研究センター)
栄養と発育をつなぐ神経内分泌機構の研究
Nutrient-dependent regulation of neuroendocrine system in the developmental transition

○楢本悟史(東北大学大学院生命科学研究科)
オーキシン排出担体PINの極性局在を制御する細胞膜ドメイン形成機構の解析
Studies on molecular mechanisms of microdomain formation at plasma membranes that govern polar localization of auxin efflux carrier PIN proteins