会員のみなさまへの第14期会長からの手紙

花岡文雄

 このたび第14期日本分子生物学会会長に選出されました。もとより非力ではございますが、精一杯務めさせて頂く所存でございます。何とぞ皆様方のご協力をお願い申し上げます。

 第14期日本分子生物学会の評議員・幹事等が別表のように決まりました。これから2年間、この体制で本学会を運営していくことになります。

 1978年に約600名の会員でスタートした本学会は、今年3月の時点で会員数が15,000名を超えました。分子生物学の発展という観点からは、会員数の増加は喜ばしいことですが、学会の運営については大き過ぎることによる弊害も見られます。

 その第一は、学会運営に関わる評議員の問題です。第11期の柳田充弘会長の時代に、会員の意見がより多く学会運営に反映されるよう、評議員の数が20名から30名に増員されました。また前期の山本正幸会長時代には、投票率の低さを改善する一助として、評議員および会長の推薦により評議員候補者参考リストを作成しました。残念ながら投票率の上昇はまだわずかですが、今期評議員の3分の2が評議員未経験者という極めてフレッシュなメンバーとなりました。元来、会員の皆さんが本学会の運営には関心が薄く、ひたすら学問的な観点から本学会に入っておられることが評議員選挙の低投票率に反映されているのは間違いありません。そのこと自体は、学会として健全だとも言えるのですが、やはり5%に満たない投票率は世間的には正常であるとは言えません。引き続き議論し、検討していくべき事項です。

 第二の問題は年会のあり方です。今や参加人数の関係から、本学会の年会が開催出来る場所は、横浜、神戸、そして福岡の3ヶ所にほぼ限定されてしまいました。また会場数もアルファベットでは足りなくなるほどで、参加したいシンポジウム・ワークショップが同じ時間帯に重なってしまうこともしばしば経験しておられることと思います。こうした状況の埋め合わせと、我が国が世界に誇る日本発の研究成果を一会場でまとめて聞く機会を持つという二つの点から、第12期の小川智子会長時代に発足したのが「春季シンポジウム」です。今年で第5回を迎え、つい先日、新潟大学の木南凌教授らのお世話で成功裏に終了したところです。ただせっかくのトップクラスの講演に、もっと各地からも、特に若い方々が参加されないともったいないという印象を持ちました。一方、本年度の年会は、佐方功幸九大教授を年会長として、12月7日から10日にかけて福岡ドームを中心会場として開催されます。6年前のドームでのポスターセッションは、極めてimpressiveでした。今年もユニークな会場で熱気溢れる議論が展開されることでしょう。近年、外国からの招待講演者を含んだシンポジウムやワークショップの企画も少なくありません。その際、英語に統一するのか、日本人は日本語で講演するのか、と言ったことが悩ましい問題です。これは別に本学会に限った問題ではありませんが、真剣に議論していきたいと思います。来年は、6月に京都で日本生化学会と共催する第20回国際生化学・分子生物学会議(会長・本庶佑京大教授)を本学会の年会とすることが既に決まっております。ただそれだけでは特に若い会員にとっての発表の場としては不十分ですので、12月に名古屋を会場として、何らかの企画を町田泰則名大教授を中心に検討して頂いております。方針が定まり次第、皆様にお知らせするつもりです。

 本学会の目的は、「分子生物学に関する研究・教育を推進し、我が国における分子生物学の発展に寄与すること」であります。その一環として、前期山本会長の時代に男女共同参画ワーキンググループが結成され、「ライフサイエンスの分野における男女共同参画の推進に関する提言」がまとめられました(別添参照)。この提言は今年4月の新旧合同評議員会で承認され、それを受けて「第3期科学技術基本計画」の策定に当っている内閣府および文部科学省に手交し、その内容を基本計画に盛り込むよう協力を依頼しました。ただ男女共同参画の問題だけではなく、ポスドク1万人計画で膨れ上がった若手研究者たちがしかるべき職を得られるよう、関係機関に働きかけていくことも急務であり、本学会として積極的に活動していかなければならないと思っております。

 本学会の主要な活動の一つに欧文誌Genes to Cellsの刊行があります。発刊当初より、この雑誌の所有権は出版元であるBlackwell社に帰属していましたが、富澤純一編集長と山本前会長の多大なるご努力により、2006年1月以降は、本学会とBlackwell社とが50%ずつ所有することになります。これを一つの契機として、Genes to Cellsが国際誌としてより高い評価を受けるよう、論文の積極的な投稿などを通じて皆様のさらなるご支援をお願い致したく存じます。

 このように問題は山積しておりますが、これから益々少子高齢化が加速する我が国において、ライフサイエンスが果たすべき役割は重大で、その最も大きな学会のひとつである本学会に寄せられる社会からの期待は測り知れません。我々執行部は会員の皆さんの意見を集約し、その実現に向けて努力する言わば代理人です。言うまでもなく主役は皆様会員ひとりひとりです。ライフサイエンスの近未来、研究者の社会における立場・処遇、研究費の配分、学会運営などなど、何でも結構ですので、忌憚のないご意見をお寄せ下さい。

(第14期日本分子生物学会会長・大阪大学大学院生命機能研究科)