理事長からのメッセージ(2020年10月)

明日のために、その3

会員の皆様へ

 ついに分子生物学会もオンラインとなってしまったか、、と会員の寂しげなため息が聞こえてきそうな感じです。分子生物学会は年会にオンサイトで参加することで、自分の研究を発表して直接の議論ができること、未発表のup-to-dateな情報を得られること、昔の仲間の研究の進捗状況も聞けるなど、いろいろな楽しみ方があることで多くの会員の支持を得てきたものと思います。第43回年会組織委員会、年会事務局、そして学会事務局の皆さんも何とかオンサイトで開催できないかと模索(struggle)したものの、神戸市中央病院の患者さんや医療関係者が多数乗車するポートライナーのラッシュを鑑みると、完全オンライン開催へと舵を切らざるを得ない状況へと追い込まれていきました。といって、8,000人近い参加者のある学会で何千もの演題をオンラインでやるとなると、簡単でないことは想像に難くありません。多くの会員の皆様は、今年の年会はどうなるのだろう、とヤキモキされたと思いますが、Late-breaking Abstract (LBA)も受付開始されましたので、ホットなデータを抱えて参加くださればと思います。

 もちろん、ハイブリット方式についても議論されましたが、今回は感染拡大の防止を最優先させるために完全オンラインとなりました。そして、オンライン開催の新たな経験を経た後に、会員の皆様に意見を出してもらい、今後の年会の在り方について考えようとなりました。よって、オンライン年会への積極的な参加を要請する次第です。そしてオンライン年会に参加してから、会員の皆様の年会への思いをぶつけてもらえればと思います(年会が終わり次第、意見聴取とアンケートの回収を行います)。個人的には、『分子生物学会は年会に参加してナンボだろ』と思っているので、『分子生物学会の年会は現場での熱い議論を原則とする』みたいなメッセージを発する形で年会を開催できるようになれればと思っています。しかし一方で、感染の危険性が残っている限りは、オンライン参加を可能にすることは必須と思われます。また、オンラインにはオンラインのメリットがあるのも事実と思います。会員の皆様からの意見は今後の学会運営を考える上でとても重要になります。会員からの率直な意見をお待ちします。

 最後にどうしても言っておかなくてはならないことがあります。オンライン開催をした場合の問題点として、情報の漏洩が指摘されています。オンラインでは機密性の保持が難しいので、どうしても未発表のホットなデータは出さないようになり、分子生物学会がもっていた未発表データをもとに熱く議論するカルチャーが失われることが懸念されています。そういった意味において、会員の皆様には、オンライン開催となるとますます機密保持の姿勢や意識を先鋭化してもらう必要があることを訴えて結びの言葉とさせて頂きます。

2020年10月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
 (基礎生物学研究所)
 阿形 清和