研究倫理委員会企画・研究倫理ランチョンセミナー
「私たちはどのように自分の論文を発表すべきなのか?:変化しつつある学術雑誌の動向を探る」

日時:12月3日(金)11:30~12:45(75分)
会場:第5会場(パシフィコ横浜 会議センター3階 304)・オンライン

 いま、学術雑誌の業界が揺れている。ひとつは、学術論文の無料公開を求める「プランS」と呼ばれる構想である。この構想は世界中の研究資金助成機関が支援しているが、大手出版社がこの「プランS」に無条件で賛同するかどうかは不透明である。オープンアクセス出版のオプションを選択した場合、100万円以上の論文掲載料が研究者に求められる可能性がある。別の深刻な問題として、いわゆる「Paper Mill」と呼ばれる、論文代筆業者を介した論文の蔓延がある。学会誌に限らず、大手出版社で受理された論文にも、このPaper Millの関与が疑われる論文が見つかっている。さらに最近、「Review Commons」という新しい論文投稿・査読の形も広まりつつある。
 私たちが、自分たちの研究成果を論文として発表する際、また編集者や査読者として、他の研究者の論文をレビューする際、これらの学術雑誌業界の抱える問題を把握しておくことはとても重要である。今回の研究倫理ランチョンセミナーでは、最近の学術雑誌の状況について、実際に出版に携わる2人の講演者に話題提供してもらい、今後私たちがどのように論文を発表するのか、研究者の立場から考えて議論する機会にしたい。

●講演1 Plan Sとオープンアクセスの方向性
Matthew Lane(Oxford University Press、日本支社)
2018年9月に、2020年から全ての学術論文をオープンアクセスにするという革命的なPlan Sが発表された。その発表に学術出版業界は大きく動揺したが、予定されていたスタートから2年がたった今、実際オープンアクセス出版はどうなっているのか?本プレゼンテーションでは、Plan Sを含むオープンアクセスの最近の動向や今後の方向性について説明する。

●講演2 組織的にニセ論文を「製造」しているpaper mill 講演資料
湯浅 達朗(Genes to Cells編集室)
Paper mill(論文工場)という、業績を増やしたい顧客の依頼でニセ論文の作成と投稿を繰り返す組織が暗躍し、ジャーナルを脅かしている。編集者や査読者に気付かれずに老舗出版社で出版に至ってしまうことも少なくない。ニセ論文によって組織的に引用されることで、被引用数が不正につり上げられている例も見られる。ニセ論文に対してどのような対策を取るべきかを考察する。

●研究倫理委員パネルディスカッション
中山 潤一(委員長/司会)、佐谷秀行、仁科博史、深川竜郎、西山朋子(以上委員)、白髭 克彦(理事長)、Matthew Lane、湯浅 達朗

※現地参加予定の方へ:横浜会場におけるランチョンセミナーのお弁当取り扱い等については、第44回年会ウェブサイトより最新情報をご確認ください。