第24期(2025-) 木村宏理事長

第24期理事長挨拶

日本分子生物学会 会員の皆様へ

第24期理事長に選任されました木村です。これから2年間、日本の科学や分子生物学の発展、および学会員の皆様の研究推進のため学会運営に尽力していく所存です。

私は、大学院生の頃30年以上前に加入して以来、海外での6年間のポスドク期間も含めてずっと分子生物学会にお世話になっています。この間、北海道大学、オックスフォード大学、東京医科歯科大学、京都大学、情報通信研究機構、大阪大学、東京工業大学と多くの研究機関を渡り歩き、現在は2024年に発足した東京科学大学に所属しています。有名な研究室の出身でもなく、博士課程中退のため学位は論文博士、任期切れの経験もあり、教員公募の応募書類提出も何年にもわたって数十を数えるなど、決してキラキラのキャリアではありません。学生会員のころは自分のデータがなく年会での発表はできませんでしたが、皆さんの研究発表に刺激を受けて研究活動の励みとしていました。一般会員になってからは海外在住期間を除いてほぼ毎年年会に参加しています。企画・運営という面で学会の活動に最初に関わったのは、2007-2008年の論文調査ワーキンググループの委員に任命されて活動したときです。ちょうど任期が切れる時期で辛かった覚えがありますが、研究倫理について勉強する貴重な機会となりました。初めて理事に選んでいただいたのは2017年で、キャリアパス委員会委員、研究倫理委員会委員、庶務幹事、広報幹事などを務め2019年から執行部に参加させていただきました。その中で、国際化の取り組み(阿形理事長)、DORA署名(白髭理事長)、科研費増額に向けた取り組み(後藤理事長)など、分子生物学会ならではの優れた活動を一緒に行ってきました。また、2024年は年会長を務めさせていただきました。

日本の研究が低迷していることが最近言われており、分子生物学関連分野も例外ではありません。日本分子生物学会は、基礎生命科学分野で最大の学会であり、その社会的責任を果たすべく、第23期には科研費増額の運動を行いました。後藤理事長のリーダーシップのもと、生物科学学会連合(東原和成代表)と協力し、多くの学会連合や学会と協同で科研費増額の署名活動や要望書の提出を行いました。その後押しもあって、令和6年度補正予算では「科研費の国際性・若手研究者支援の強化」に52億円がつきました。また、令和7年度予算案では科研費は2億円の増額で2,379億円となっています。きわめて僅かではありますが、これまで何年も2,377億円での据え置きから少しでも増額となったことは、来年以降のさらなる増額に向けて励みとなります。第24期も、学会連合をはじめとして関係各所と連携して引き続き科研費増額運動に取り組みます。ただ、科研費が増額すれば研究環境の問題が全て解決できるわけではありません。若手育成に重要な学振特別研究員の待遇改善やキャリアパス問題、教育・研究機関の基盤経費の充実に向けても対外的な取り組みを進めていきたいと思います。

分子生物学会としてもう一つの対外的な取り組みとして、国際化があります。何期にもわたって学会の国際化についての議論が続いているのですが、国際化イコール英語化という認識ではありません。英語化については基本的には各年会で方針を決めることになりますが、性能が高度化してきた翻訳ツールを使いこなすことができるようになれば、多言語でのコミュニケーションが格段に楽になってくると思います。言語以外にも、多様性の確保や年会の行動規範、広報活動なども国際化の課題です。また、国際連携についても強化していきたいと思っています。この数年、年会ではポスタークリニックや出版倫理、賞の選考など継続的にEMBOの協力が得られています。年会以外での活動も視野にいれてEMBOとの協力関係を進めていきます。さらに、アメリカASCB、オーストラリアASBMBとの持続的連携も検討してきたいと思っています。

他にも分子生物学会として取り組むべき課題が多くあります。まず、Genes to Cellsの出版、編集体制の再検討です。Genes to Cellsは既に国際誌として位置づいていますが、さらにプレゼンスの向上を目指す必要があると思っています。新しいチーフエディターや編集幹事にご尽力いただきながら、エディトリアルボードの刷新などの検討を進めていきたいと思います。また、学会HPがかなり古いスタイルとなっているので、予算を勘案しながらリニューアルを検討していきます。この数年会員数が微減の傾向だったのですが、昨年はその傾向に歯止めがかかり若い会員が増えています。より魅力的な学会になるように広報活動も力を入れていきたいと思います。

分子生物学会は、自由で風通しの良い雰囲気があります。この伝統を大切にし、会員の皆さんが思いっきり研究し、交流できる環境を整えたいと思います。ご意見がございましたら、遠慮なくお寄せください。

2025年1月
特定非営利活動法人日本分子生物学会 第24期理事長
(東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター)
木村 宏

理事長からのメッセージ(2025年8月)
年度会費の改定に関する臨時総会の開催について

日本分子生物学会 会員の皆様へ

さる8月6日に臨時理事会が開催され、分子生物学会会員の年度会費改定についての検討が行われました。提案させていただいたのは「学生の年度会費を、今より抑えることはできないか」ということです。その分を少しずつ学生以外の方々に支えていただかざるを得ないことになりますが、そちらの負担額があまりに大きくなることは望ましくありません。そこで、学会の会費収入総額が均衡を保てる範囲で試算を重ね、正会員と次世代教育会員に年1,000円の負担増をお願いし、学生会員の費用負担は年1,000円とする年度会費の改定案がまとまりました。つまり前二者の年度会費は現在の6,500円から7,500円とし、後者は現在の3,000円から1,000円に変更、ただし新入会の際には入会金1,000円がかかりますので初年度会費を0円として入会金だけ申し受けるというものです。シニア会員の3,000円と賛助会員の一口40,000円は据え置きの案となっています。今回の提案が認められた場合、正会員の年度会費については、2007年度に4,500円から6,500円に改定されて以来、約20年ぶりの改定となります。

分子生物学会の会計年度は10月~翌年9月のサイクルですので、新年度(2026年度)から改定後の年度会費を適用するには今年の9月末までに総会での承認が必要となります。そのため9月25日にオンラインで臨時総会を開催することとしました。総会の成立には正会員・次世代教育会員・シニア会員の過半数の出席(欠席者からの委任状を含む)が必要です。学生会員の総会出席や発言はもちろん歓迎されますが、法人の定款上、議決権はありません。今回の案で会費値上げの対象となっている方々の多くの理解を得て臨時総会を開会できるかがポイントとなります。

今月中に改めて臨時総会の案内と出欠回答のお願いをお送りする予定です。出欠回答をいただく際に、学生会員の皆さんも含め、会員の方々からの会費改定に関するご意見も集められるプラットフォームを用意したいと考えています。皆様にはご協力をお願いいたします。

ちなみに、会員の年度会費とは別に年会参加にかかる年会参加登録費の金額は、年会ごとに年会長や年会組織委員会が検討して決めていますが、そちらでも他で何とかやりくりして学生の負担を少しでも軽くしようとする流れが受け継がれている印象を受けます。分子生物学会年会は、自由な雰囲気で職階や立場に関係なく議論できる伝統が受け継がれています。正会員やシニア会員の方々の中には、学生の頃から分子生物学会の年会に参加してきた方も多くおられるのではないでしょうか。

近年の物価高・円安により、研究費が実質的に目減りしており、また、給与レベルも物価高の上昇に追いついていない状況の中で、正会員・次世代教育会員の年度会費の負担が増えることは望ましいことではないと理解しています。しかしながら、若手研究者の減少が現在大きな問題となっており、分子生物学を含む生命科学も例外ではありません。学生が学会に参加するための負担をできる限り抑えることで、次世代研究者の育成の促進につなげていきたいと考えています。何卒ご理解とご協力いただけるようお願い申し上げます。なお、研究費に関しては科研費の増額運動を生科連などと連携して継続して進めていることを申し添えます。

2025年8月21日
特定非営利活動法人日本分子生物学会 第24期理事長
(東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター)
木村 宏