第21期(2019-2020) 阿形清和理事長

第21期理事長挨拶

会員の皆様へ

 私の会員番号は000004である。1978年12月5日に開催された東京での分子生物学会の発足の総会に出席し、ワクワクしながらカイコのフィブロイン遺伝子をカーネギー研究所でクローニングしていた鈴木義昭氏にインタビューしたのを憶えている。in vitroで後部絹糸腺特異的な転写制御を再構築することに鈴木氏らは挑戦していた。京大の4回生の時だった。岡田節人研究室で竹市雅俊氏と細胞接着に関する実験を卒業研究としてやっていた頃だ。1979年に大学院に進学後は、志村令郎氏から制限酵素の精製のプロトコールをもらい、50リットルに及ぶバクテリアの培養液からEcoRIやBamHIを精製しては、レンズ細胞の分化転換に関する遺伝子レベルの研究を安田國雄氏や近藤寿人氏に師事しながら始めた。主な実験材料がニワトリだったので、ニワトリのいろいろな組織からRNAを精製するプロトコールを試行錯誤しながら作っていった(当時は脊椎動物の組織からRNAを抽出した論文はほとんどなかった、、)。分子生物学会で最初に発表したのが金沢での第4回年会だった。ニワトリでは、尿素サイクルのASL酵素遺伝子がduplicateし、その一方がレンズ・クリスタリン遺伝子へと進化していたので、その2つのゲノム遺伝子をheteroduplex解析して2つの遺伝子はtandemにつながっていること、exon以外はdiverseしていることを電子顕微鏡の観察から報告した(DNAの電子顕微鏡観察は山岸秀夫氏に教わった)。そして、レンズに分化転換でき得る細胞ではレンズ・クリスタリン遺伝子はleakyな転写があることを証明し、レンズへの分化転換能力を保持している細胞ではレンズ関連遺伝子のクロマチン状態がオープンになっていることを示唆して博士の学位を取得した(Agata et al., 1983, Dev. Biol.)。博士課程の3年次に基礎生物学研究所(基生研)の助手として雇われたが、当時の基生研はDNAが嫌いな研究所だったために、DNAシークエンスの設備をセットするだけでも大変だったというかイジメにあって大変だった。そんな状況下で青天の霹靂で元ボスの岡田節人氏が所長に就任し、研究所は遺伝子をやる方向へと舵が取られた。岡田門下生だった私と浜田義雄先輩とでλgt11を用いた抗体による標的遺伝子のクローニング法を日本でいち早く立ち上げ、全国のいろいろな研究室の遺伝子クローニングを支援するとともに日本全体への分子生物学的手法の浸透に尽力した。当時筑波大学医学部生だった柳沢正史氏や客員部門にいた慶應大学医学部生の宮脇敦史氏もわれわれに分子生物学の手ほどきを受けた学生だった。

 まさか40年後の2019年に分子生物学会の理事長になり、基礎生物学研究所の所長になるとは夢にも思っていなかった。しかし、感慨にふけっている暇などないのが実情だ。分子生物学会の理事会はこの1月で21期目を迎える。人間に例えると二十歳の成人になったところだ。分子生物学会は身長2mの巨人となったが、世界と戦えるだけの逞しい体になっているのだろうか? ガタイはでかくても、ぶよぶよした体つきになっているのではないだろうか。今までの理事会では、合同年会をどうするかとか、捏造問題へどのように対応するかといった内向きの議論にエネルギーを割かれ、世界を見据えた議論にほとんどエネルギーが割かれてこなかった。20期の理事会で、それらの問題に終止符を打ったことを受け、21期の理事会としては、世界を見据えた議論にエネルギーを割いていければと思っている。世界と戦える体にするには、単に英語化すれば良いというものではない。フロントのサイエンスを展開すること、次の世代へワクワク感のあるサイエンス・環境を提供していくことが不可欠である。会議が増えて研究に割く時間が少なくなったなどと弱音を吐いている暇はない。2年間の任期の間に何処まで進化できるかに挑戦したい。個々の会員の世界を見据えた奮起にも期待したい。

2019年1月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
(学習院大学・理学部・生命科学科)
阿形 清和

理事長からのメッセージ(2019年7月)

明日のために、その1

会員の皆様へ

 アメリカではバイオインフォマティックを目指していた若者がAIに流れるようになったと聞きました。世界の流れは早く、経済のみならずサイエンスの世界もあっという間に日本は置き去りにされそうな雰囲気です。日本分子生物学会は規模的には世界レベルかもしれませんが、サイエンスの中身についても世界のフロントとして、海外からもこの年会は見逃せないという評判を築きあげたいものです。

 英語というハンディキャップをかかえていた日本は、世界に先行する内容で世界と伍してきた感じがありましたが、そんな余裕すらなくなってきた感じです。特に、サイエンス業界の若い世代の内向き志向が強くなったのは想定外と言わざるをえません。世界基準を手にしたサッカー界では、どんどん若者が海外を目指して、高校生の頃からスペイン語やドイツ語や英語を自主的に勉強しているのとは対照的です。

 そういった観点から、世界基準の導入・定着が今の学会に課せられた課題と思います。interdisciplinaryなサイエンスが世界の潮流となった現在、学会は少し異分野の感がある生態学会などとのジョイント企画を積極的に導入しています。そして、今年の九州での年会から英語化へ向けての<step by step>での英語化を開始します。<日本にいながら国際学会>というキャッチコピーのもと、4日間のうち2日目を<丸ごと英語の日>にすることを目指し、すべてのシンポジウム・ワークショップを英語でプレゼン・ディスカッションして、<日本にいながら国際学会>を参加した若い世代にも体現してもらえればと思っています。もちろん、海外からの参加者もいないのに英語でやっても陳腐なので、できるだけ海外からの参加者を増やすよういろいろな仕込みもしています。プログラムとしては、海外からの参加者も年会全期間を楽しめるよう、必ず英語のセッションが何処かにはあるようにプログラムを組んでもらっています(セッションの予定表には、英語での発表がT字型に組まれているので、T字型プログラムと呼んでいます、すなわち、会期を通して(横に)英語のセッションがあり、2日目は丸一日英語という縦に英語のセッションがあります)。

 また、今月EMBOの事務局を訪ねる機会があり、将来的な合同セッション開催の可能性について意見交換をしました。今後、理事の皆さんと議論を積み重ねて、学会として具体的な将来目標を作ることで、サイエンスの中身は世界基準を凌駕し、発表は世界基準でやるという未来に進みたいと考えています。年会組織委員会および学会執行部としては、多くの会員が学会としての目標を実現していくために、今回の福岡年会から積極的に英語でのプレゼンにチャレンジしてもらうことを期待しています。

2019年7月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
(基礎生物学研究所)
阿形 清和

理事長からのメッセージ(2020年1月)

明日のために、その2

会員の皆様へ

 九州での年会は寒い中での開催でしたが、会場は活気に溢れ、あらためて<分子生物学会恐るべし!>と感じた次第です。聞きたいセッションが重なっているとか、似たようなメンバーが出すぎとか、いろいろと不満の声も聴きますが、40年の月日をかけてここまで進化したことに、第一回めの年会に出席した者には驚きは隠せませんでした。活気ある年会を開催してくださった年会関係者の皆様に学会を代表して御礼申し上げます。しかし、理事長が悦に入っていたのでは話にならず、さらなる進化に向けて、年会中もいろいろと活動を行いました。

 まずは、年会の国際化について、国際化担当幹事を設けることを理事会・総会でお認め頂き、初代幹事として理研の林茂生会員に就任を要請し快諾を得ました。今までに、42回年会は佐々木裕之・副理事長、43回年会はGenes to Cells編集幹事の上村匡・理事、44回年会は塩見美喜子・副理事長、45回年会は広報幹事の深川竜郎会員と、たまたま執行部メンバーが年会長として揃ったこと。さらに、第46回年会を国際化担当幹事の林茂生会員が引き受けてくださったことで、5か年計画で年会の国際化を進めていくことができる態勢が整いました。前回の理事長メッセージ「明日のために、その1」に書かせてもらったように、今回の福岡年会から英語での発表をT字型に組んでもらい(会期を通して英語のセッションがあるとともに、2日目は丸一日英語という縦に英語のセッションがある様式を指します)、国際化の第一歩を踏み出しました。これらの試みについて会員からご意見を頂き、それを次回の年会に反映させる形で年会の国際化を進化させていきたいと思います。

 例えば、私個人の意見を書かせてもらうと、2日目は丸一日英語という縦に英語のセッションが組まれましたが、ポスター発表のディスカッサーに外国人を指名するような試みを今後は入れてもらえればと思いました。このような今後の進化に向けての意見を会員から頂けると幸いです。

 また、海外の学会とのジョイントシンポについても年会中に模索しました。韓国の日本の分子生物学会に相当するKSMCB(the Korean Society for Molecular and Cellular Biology)のYoung-Joon Surh会長が福岡の年会を視察に訪れ、将来的なジョイントの可能性について、まずはお互いの会を知ることから始めることを議論しました。EMBOとのジョイントについては、女性研究者のキャリア・アップに関するワークショップを次回の年会から始めることを議論しました。新たな試みを通してstep by stepで学会の国際化が推進されれば、と思っています。

 最後になりましたが、2011年から続いていました「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子 基金」は、2020年が最終回の募集となります。毎年300万円を5名程度の方に贈呈してきました(2020年の助成人数は6名)。多くの若手研究者が、富澤基金で大きな翼を得たと思います。今後とも、分子生物学の振興に向けた、各種基金のご寄付をお考えの方がおられましたら、是非とも事務局までご連絡ください。

2020年1月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
 (基礎生物学研究所)
 阿形 清和

理事長からのメッセージ(2020年10月)

明日のために、その3

会員の皆様へ

 ついに分子生物学会もオンラインとなってしまったか、、と会員の寂しげなため息が聞こえてきそうな感じです。分子生物学会は年会にオンサイトで参加することで、自分の研究を発表して直接の議論ができること、未発表のup-to-dateな情報を得られること、昔の仲間の研究の進捗状況も聞けるなど、いろいろな楽しみ方があることで多くの会員の支持を得てきたものと思います。第43回年会組織委員会、年会事務局、そして学会事務局の皆さんも何とかオンサイトで開催できないかと模索(struggle)したものの、神戸市中央病院の患者さんや医療関係者が多数乗車するポートライナーのラッシュを鑑みると、完全オンライン開催へと舵を切らざるを得ない状況へと追い込まれていきました。といって、8,000人近い参加者のある学会で何千もの演題をオンラインでやるとなると、簡単でないことは想像に難くありません。多くの会員の皆様は、今年の年会はどうなるのだろう、とヤキモキされたと思いますが、Late-breaking Abstract (LBA)も受付開始されましたので、ホットなデータを抱えて参加くださればと思います。

 もちろん、ハイブリット方式についても議論されましたが、今回は感染拡大の防止を最優先させるために完全オンラインとなりました。そして、オンライン開催の新たな経験を経た後に、会員の皆様に意見を出してもらい、今後の年会の在り方について考えようとなりました。よって、オンライン年会への積極的な参加を要請する次第です。そしてオンライン年会に参加してから、会員の皆様の年会への思いをぶつけてもらえればと思います(年会が終わり次第、意見聴取とアンケートの回収を行います)。個人的には、『分子生物学会は年会に参加してナンボだろ』と思っているので、『分子生物学会の年会は現場での熱い議論を原則とする』みたいなメッセージを発する形で年会を開催できるようになれればと思っています。しかし一方で、感染の危険性が残っている限りは、オンライン参加を可能にすることは必須と思われます。また、オンラインにはオンラインのメリットがあるのも事実と思います。会員の皆様からの意見は今後の学会運営を考える上でとても重要になります。会員からの率直な意見をお待ちします。

 最後にどうしても言っておかなくてはならないことがあります。オンライン開催をした場合の問題点として、情報の漏洩が指摘されています。オンラインでは機密性の保持が難しいので、どうしても未発表のホットなデータは出さないようになり、分子生物学会がもっていた未発表データをもとに熱く議論するカルチャーが失われることが懸念されています。そういった意味において、会員の皆様には、オンライン開催となるとますます機密保持の姿勢や意識を先鋭化してもらう必要があることを訴えて結びの言葉とさせて頂きます。

2020年10月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
 (基礎生物学研究所)
 阿形 清和

理事長からのメッセージ(2020年10月〔学術会議関連〕)

理事長メッセージ:日本学術会議の会員任命問題について(2020年10月13日)

会員各位

今回の学会連合関係の声明に賛同したことに対し、すべての会員が賛同したようにとらえられるのは許せないといったご意見が事務局に複数寄せられています。理事長としては、それらの意見を全て拝読させて頂きました。

そこで、今回の経緯について説明と補足をさせて頂きます。

10/4(日)に生物科学学会連合(生科連)の代表の小林武彦氏から日本分子生物学会に対して、今回の学術会議の任命拒否問題についての声明について、生科連の参画学会の一つとして声明を発出することの賛否を10/5(月)の昼までに欲しいとメールを受けました。

週末に受信したメールでしたので、事務局を通して理事会へ諮る余裕はないと判断し、理事長名で直接、生科連からのメールを添付して理事会に賛否を諮りました。

月曜の朝までにほとんどの方から返信をもらい、賛成多数の結果となり、生物科学学会連合へ賛同という形で回答しました(付帯意見もつけました)。

もちろんお察しの通り、一部の理事には日本学術会議そのものへの不信感がたまっており(小生自身も日本学術会議の連携会員のお誘いを拒否し続けている人間の一人です)、政治の介入に対しての声明には賛同するが、日本学術会議の存在を肯定したものではないことの付帯意見がつけられました。

10/5(月)の段階では、世間では、
(1)政府が理由を付さずに学術会議会員による決定に介入し、一部会員の任命を拒否したという問題
(2)日本学術会議の在り方そのものに関する問題
の2点が混同したままに議論されていましたが、分子生物学会を含めた生科連の声明は、あくまで(1)を意識したものとして受け止め賛同した次第です。

賛同したこと自体が現在の日本学術会議の在り方を肯定し、擁護しているように思われるのは不本意であり、理事長としては、生科連からの賛否の問い合わせに対して、理事会に諮り、賛成多数として生科連に対して回答した次第です。

そして、本学会からの付帯意見やほかの学会からの議論もあって(これは推察ですが)、声明文が少しでも誤解のないように改訂されてから行われたものと思っています。

しかしながら、多くの会員に不信感を与えたことはお詫び申し上げるとともに、日本学術会議のような科学アカデミーの在り方については、今後とも議論をしていきたいと思います。

●共同声明「日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する緊急声明」発表記者会見を行いました(日本物理学会HP)
https://www.jps.or.jp/information/2020/10/post_100.php

日本分子生物学会が、今回の問題に対して、お気楽に賛成したわけではないことを申し添えさせて頂きました。

-阿形@第21期理事長


お知らせ:理学系学会合同緊急声明に賛同しました(2020年10月9日)

分子生物学会会員の皆様

日本分子生物学会 
理事長 阿形 清和

日頃、本学会の運営にご協力をいただき、ありがとうございます。
今年のノーベル化学賞では、ついにCRISPRによるゲノム編集で女性2名が受賞して女性受賞者の割合が 1人/25人から1人/20人くらいにアップしました。特にJennifer Doudna博士が子育てしながらのノーベル賞ということで、厳しい環境で、迷いに迷う日本の女性研究者にも大きな励みとなったのではないでしょうか。Doudna博士は第37回MBSJ横浜年会に家族とともに来日、ご講演いただいたことは記憶に新しいと思います。
改めて感謝するとともに、Doudna、Charpentier両博士の今後益々のご健勝をお祈りいたします。

さて本日は、日本学術会議の会員任命問題に関係しまして、以下3点をお知らせいたします。

(1)本学会は「生物科学学会連合」(以下、生科連と略)に加盟しています。その生科連代表の小林武彦教授より加盟学会あてに「日本学術会議会員候補の任命拒否に対する緊急声明」を発出したいとの検討依頼を受けました。この件に関しまして、急きょ、理事会に諮りました結果、生科連に所属します日本分子生物学会もこれを支持することを決定しましたこと、ご報告します。

(2)その後、発信団体が増えまして、声明文は以下の内容で発出いたします。
声明文:
『日本数学会、生物科学学会連合、日本地球惑星科学連合、自然史学会連合、及び、日本物理学会は、第25期日本学術会議会員候補者の一部について、政府により理由を付さずに任命が行われなかったことに関して憂慮しています。従来の運営をベースとして対話による早期の解決が図られることを希望いたします。』

(3)本日10月9日夕方、日本数学会、生物科学学会連合、日本地球惑星科学連合、自然史学会連合、及び、日本物理学会の合同で記者会見が行なわれる予定です。記者会見については情報が入り次第、学会HPでお知らせいたします。

理事長からのメッセージ(2021年2月)

明日のために、その4『サイエンスの刺激が得続けられる分子生物学会を目指して』

 2年前の総会で、学会として成人式を終えた(20期を終えた)ので、学会活動の内向き議論から外向き議論へと転換を図ろう、と新理事長の就任挨拶で述べました。そして、第20期の理事会で決定した将来計画の申し送り事項(年会の開催方針 & 国際化、年会開催ルール細目)を受けて、第21期理事会では学会の国際化を推進するための「5カ年計画」を設定しました。

 学会の国際化には、①海外との連携の強化、②そのためには年会の英語によるプレゼンの推進、の2本を同時並行的に進める必要があります。しかし、へたに年会の英語化をすると年会の魅力を削る危険性もあり、周到な準備と工夫が必要となります。そこで打ち出したのが「5カ年計画」でした。それは会員に対して、国際化へ舵を切るが会員の総意を汲みながら国際化をする、というメッセージを込めたものでもありました。

 具体的には、EMBOとの国際連携を手始めとし、それに向けて年会におけるEMBOとの交流ワークショップや若手交流プログラムの検討を行いました。昨年の2月にEU連合の大使館であるヨーロッパ・ハウスでMBSJ/EMBOの合同シンポを行い、昨年の年会でEMBOとのサテライト・ワークショップが実現されました。また、EMBOフェローシップの日本国内での広報を積極的に行いました。また、韓国の分子細胞生物学会(KSMCB)との連携協定の模索を開始し、2019福岡年会・KSMCB2020大会(オンライン開催)・MBSJ2020 Onlineでお互いの執行部レベルでの交流を開始しました。さらに、アメリカの細胞生物学会(ASCB)との連携企画を来年の年会(深川年会長)から開始することになりました。

 それらの動きと連動する形で、2019福岡年会から佐々木年会長と組織委員会のご協力を得て、T字型プログラムを組み込むようにしました。海外からの参加者が年会に参加しても、年会期間中は必ずどこかで英語の魅力的なセッションが聞ける(T字の横棒に相当)ようにし、また年会2日目はシンポやワークショップのみならずポスターもできるだけ英語プレゼンのものを集めて(T字の縦棒に相当)、日本にいながら国際学会に参加しているようにすることを目標としました。昨年末のMBSJ2020 Online(上村年会長)では、シンポジウムとワークショップはすべて英語で開催されました。今年の年会(横浜、塩見年会長)でもT字型プログラムで行う予定です。年会への海外参加者の絶対数および割合とも確実に増えて、日本人しかいないのに英語で年会をやる陳腐さを払拭するとともに、世界のフロントラインの研究と接する機会が増え、最新情報が得られる分子生物学会の良さをさらなる高みへと導くことを推進しています。

 日本の学会で国際化を進めていくことは至難の業ですが、日本分子生物学会のチャレンジはこれからも続いていくものと思っています。至難の業を遂行するために、「5カ年計画」に当たる各年会長には執行部に入ってもらい一貫性のある体制を構築しました。さらに国際化担当幹事として林茂生会員を指名して執行部に入ってもらい、「5カ年計画」の5年目の年会は林さんに年会長の大役をお願いした次第です。毎年の年会の後のアンケートでこれらのチャレンジへの会員からの意見を集約して、次年の年会へフィードバックをかけ、5年目に一区切りつけて、学会としての今後の在り方を会員へ諮りますので、すべての会員の総和として国際化へ取り組めればと思います(それくらいの覚悟がないと国際化はできないと思います)。

 これから第22期の理事会へと引き継いでいくことになりますが、第21期で踏み出した国際化へのチャレンジが、会員にとって永続的な魅力を提供できる学会へと進化していくことのきっかけになってくれればと切に願うものであります。

2021年2月
特定非営利活動法人 日本分子生物学会 第21期理事長
(基礎生物学研究所)
阿形 清和