特定非営利活動法人 日本分子生物学会 平成30年度(第40回)通常総会記録

日 時:平成29年12月7日(木)19:05~20:20
場 所:神戸ポートピアホテル 本館 地下1階 偕楽2(第2会場)
社員数(正会員+名誉会員+シニア会員+次世代教育会員):8,887名
出席者数:4,771名(本人出席39名、表決委任者4,732名)

議事内容:
 

1.定款第25条に基づき、杉本亜砂子理事長より本総会議長として林茂生会員が指名された。さらに定款第29条に基づき、議事録署名は、篠原彰会員(第40回年会長兼)と杉本理事長が担当することが確認された。

2.林議長より、定款第26条(総会の定足数)に基づき、上記表決委任者(委任状)を含めて出席4,771名となり、本総会は成立する旨報告された。

3.経過報告(事業報告)

1)理事長報告
 杉本理事長より、総会資料(1頁:2017年度事業報告)に基づき、事業活動全般と、さらに下記5点について報告が行われた。

 ①富澤純一名誉会員が2017年1月26日に逝去されたことについて哀悼の意が述べられた。富澤名誉会員は本学会の学会誌Genes to Cells初代編集長として創刊1996年から2005年まで尽力された。また、2011年からは私財を投じて「日本分子生物学会 若手研究助成 富澤純一・桂子 基金」を立ち上げ、若手生命科学研究者の研究支援を続けてこられた。本年会では助成を受けた若手研究者も登壇するメモリアルワークショップが開催された。
 本年で第7回を数える富澤基金・若手研究助成は、第10回(2020年)まで継続することになっている。12月5日に開催された定例理事会にて、2018年1月より、基金運営委員長が山本正幸第2期委員長(第1期より歴任)から小原雄治第3期委員長に交代することが承認された。

 ②本年会はConBio2017(生命科学系学会合同年次大会)として開催中である。この試みの実現に尽力してこられた篠原年会長に謝意を述べたい。本学会設立時の趣意書をひもとくと「分子生物学会は、広い領域にまたがる研究者がそれぞれの専門分野で研究を続けつつ連携し、真に学際的立場に立脚した生命科学をつくることを目指す」とあり、これまで本学会とあまり接点のなかった学会の会員にも本年会へ参加していただけたことは、まさにその理念に合致するものである。

 ③2018年に本学会創立40周年を迎えるに際し、記念事業の企画を進めている。具体的には、本学会ならびに日本の分子生物学草創期からの歴史に詳しい6名の研究者(石浜明、大石道夫、小川英行、関口睦夫、由良隆、吉田光昭の各氏〔五十音順〕)に語り手を依頼し、その弟子世代の聞き手と対談を行っていただくものである。対談は順次、本学会会報に掲載していく予定である。

 ④本学会の学会誌Genes to Cellsは、富澤純一初代編集長に続き、2006年から柳田充弘2代目編集長が任に就いているが、このほど3代目の編集長として西田栄介会員の就任(2018年4月予定)が第20期第2回定例理事会において承認された。引き続き素晴らしいジャーナルの刊行をしていただきたい。

 ⑤前期理事会からの継続審議申し送り事項となっていた本学会の国際化対応問題について、林茂生会員に座長を依頼し、国際化対応ワーキンググループを結成して検討作業を行った。今期理事会執行部が兼務する将来計画委員会において同ワーキンググループからの答申を受けてまとめた提案をもとに、第20期第2回定例理事会で関連の議論がなされ、本学会としての方針を決定した。

 (1)国際会議支援事業の継続:国際会議支援事業については、特に若手の研究者が国際的な体験をする上で有用なため、選考基準を一部見直しの上で年間500万円の予算を確保して継続することとなった。

 (2)国際団体との提携の可能性について:

  ・前期理事会より検討を受けていたIUBMB・FAOBMBとの提携については、本学会としては現状あまりメリットがなく見送ることとなった。

  ・CSHA(Cold Spring Harbor Asia)に関しては、分野によっては質の高い国際会議の誘致が期待できる一方、実際の運営に関して金銭的・人的支援が必ずしも十分に受けられるとは限らないとの情報もあり、現時点では積極的な提携は行わないことになった。

  ・上述の国際化対応ワーキンググループ検討作業後の時期に本学会へ提案された案件として、日本がEMBO(European Molecular Biology Organization)のAssociate Member Nationとなるよう文科省に働きかける呼びかけが浜田博司氏(理研CDB)を中心に行われており、本学会としてはこれに賛同することとした。実現すると、GDPに応じた供託金(日本の場合年間2.6億円)を支払う必要があるが、日本の研究者がEMBOの種々の若手研究助成・賞への応募等を認められるようになり、日本の生命科学研究コミュニティにとって大きなメリットがあると思われる。

 (3)年会の国際化・英語化:

  ・学会として国際化、英語化対応は進めるべきだが、実現に向けた具体案については様々な意見が出ている状況であり、今後継続して議論を進めることとなった。

  ・従来、年会での発表言語や外国からの参加者向けの各種対応等については年会長に方針を一任していた。しかし、後述の今後の年会のあり方に関する議論とも関連して、国際化・英語化に関する方針は年ごとに変わるのではなく学会として継続的に方向性を定めるべき状況になりつつあることから、学術的な企画に関する年会長の自由裁量を最大限確保した上で、理事会や執行部にて年会長と連携しながら議論・検討を続けていくことが確認されている。

 ⑥委員会活動

 (1)研究倫理委員会

  ・年会初日の12月6日(水)夜に研究倫理委員会企画・研究倫理フォーラム「顕微鏡画像取得と定量解析の注意点」を開催し、盛況であった。研究不正問題はスポーツの世界におけるドーピング問題と同様、根絶が難しく、本年には残念ながら本学会理事経験者の発表論文が不正の認定を受ける事件もあったが、今後も研究倫理教育・啓発活動を学会として続けていきたい。

 (2)キャリアパス委員会

  ・年会最終日の12月9日(土)日本生化学会男女共同参画推進委員会との共同企画として、ランチョンセミナー「研究者人生における様々な選択肢」を開催する。研究者の道を進む上で直面する様々な壁について考える企画となっており、関連する事前アンケートでは回答が850件近く集まった。アンケート結果については文科省にも一部情報提供を行ったことが報告された。

 (3)生命科学教育

  ・会員有志のボランティアに支えられて行っている高校等への講師派遣事業は、着実に依頼が増えてきており、派遣実績はこれまでにのべ60件を数える。

  ・年会最終日12月9日(土)の高校生発表では多数のポスター・口頭発表が予定されている。次世代を育てるため多くの方々に参加いただきたい。

 (4)将来計画委員会

  ・今期執行部が兼務し、今後の学会の方向性や年会のあり方などについて検討している。

  ・日本生化学会からは近年、毎年のように年会の合同開催打診を受けている。また同学会と本学会とを将来的に何らかの形で提携または統合する可能性についての話題は過去に繰り返し聞かれてきた。それらの理由として両学会に所属する会員数や専門分野における重複内容の大きさなどが挙げられてきたが、これまで具体的なデータ分析に基づく議論はあまりなされてこなかったため、今期は、まず各種データ収集を行って現状の把握に努めることとした。データは今後、会報や学会ホームページを活用して発信していく予定だが、本総会ではその一部を紹介する。
 会員数について:本学会の会員数は約16,000名であった2005年をピークに減少傾向となっており、現在約13,000名である。30代以下の会員の割合は10年前の約60%から約35%にまで激減しており、特に30代の会員の減少が著しい。本学会と日本生化学会とで重複する会員の割合は本学会会員全体の約16%で、学生会員のみでは約4%となっている。
 演題分類について:本学会と日本生化学会とで合同大会を開催した際の、各学会会員のポスター発表における演題分類から研究領域を比較すると、「発生と再生」「ゲノムと遺伝情報」では本学会会員のみに所属している会員が約9割、「酵素・レドックス・生体エネルギー」「糖質生物学・脂質生物学」のセッションは約8割が日本生化学会のみの会員であった。「細胞応答」「疾患生物学」などでは両学会に所属する会員が比較的見られるが、それでも演題分類ごとにみた両学会に所属する会員の割合は10~15%程度である。
 以上から、数字の上では、両学会でオーバーラップする部分が大きいわけではなく、むしろ相補的な関係にあるという捉え方ができる。上記を認識した上で、生化学会との関係を考えていきたい。

  ・年会における他学会との連携の仕方について考える際に、ConBio2017の協賛団体との関わり方は示唆に富んでいる。従来、本学会の年会では、他学会と連携する場合に大会長を複数名立てる合同大会の開催形式となっていたが、それ以外の形態も模索できるのではないかという意見も出ている。このほど日本生態学会から、同学会で今後分子生物学的手法を用いる会員が増える見込みのため本学会と何らかの形で年会での連携を行いたいとの打診があった。まずは双方の年会において合同セッションを1つ設けることなどを検討している状況である。

  ・将来計画委員会では検討を継続し、今後も各種データを公表していきたい。

2)庶務報告
 深川竜郎庶務幹事より以下の報告が行われた。

 ①会員現況:〔2017年11月6日現在〕正会員8818名、シニア会員58名、次世代教育会員11名、学生会員3975名、賛助会員26社、総計12888名(前年11月対比、-417)
会員減の理由として、例年夏に年会での演題発表資格を得るため入会者が増えるところ、ConBio2017において協賛団体会員に本学会同様の参加・発表資格を付与したことによる影響が考えられ、実質的な会員数推移としては前年からほぼ横ばいであったものと思われる。

 ②高等学校の生物教育における重要用語の選定について:高等学校の生物教育で学習すべき用語として、現行の教科書「生物」では、約2000の用語が重要と指定されているが、このほど日本学術会議は高等学校の生物教育で学習すべき用語を512語として選定・提案した。生物学が暗記を求める学問であるという誤解を払拭し、ロジックを考える学問であることを示すための提案であるが、大幅な変更を伴う内容であり、本学会会員を含む研究者・教育者からのフィードバックが期待されている。

 ③国際生物学オリンピック:本学会が加盟している生物科学学会連合(生科連)において、2020年に日本(長崎)で開催される国際生物学オリンピックへ30万円の寄附を行うことが決定している。生科連加盟団体は約30あり、1団体(学会)あたり約1万円を支出する計算となる。これとは別に各学会へも寄付が呼びかけられており、本学会では理事会での検討の結果、1口10万円を学会として寄付することとなった。

 ④前項にも関連するが、次世代を育てる生命科学教育、また進路や将来を考えるキャリアパス委員会などは活発に活動を続けている。学会のあり方を考える将来計画委員会でも今後継続的に議論を行っていく。

3)編集報告
 上村匡編集幹事より『Genes to Cells』について以下の報告が行われた。

 ①従来の「Original Article」に加え、重要な発見を迅速に出版することを目的とした短めのフォーマットである「Brief Report」が順調に投稿を増やしている。投稿してくださった著者各位には、Self-Citationをお願いしたい。

 ②理事長報告にある通り、来年度の編集長交代に向けて、柳田充弘2代目編集長から西田栄介3代目編集長への引継ぎを進めていく。

 ③伝統絵画のなかに生命科学の遊び心を加えた本誌の表紙デザインは、高い評価を得ている。直近3年分の表紙ができるまでの裏話を盛り込んだタペストリーを本年会の展示会場で展示しているので、ぜひご覧いただきたい。

4.議事

1)平成29年度(2017年度)決算承認の件
 三浦正幸会計幹事より総会資料(2~14頁)に基づき、平成29年度活動計算書の収支について詳細報告が行われた。
 2017年10月27日、公認会計士宮城秀敏氏の会計監査を受け(総会資料の独立監査人の監査報告書を参照)、同年11月10日に岡田清孝監事、近藤寿人監事の監査を受けた。
 審議の結果、本決算は異議なく承認された。

2)平成30年度(2018年度)活動予算書承認の件
 三浦会計幹事より総会資料(16~17頁)に基づき、平成30年度活動予算書について説明が行われた。
 審議の結果、同活動予算書は異議なく承認された。

5.第40回(2017年)年会長挨拶
 篠原彰第40回年会長より挨拶があり、年会開催状況について報告が行われた。本年会は日本生化学会との合同開催に加え、協賛37団体等の協力を得たConBio2017として開催中である。数年前の故・富澤純一名誉会員からの「分子生物学会はこのままで大丈夫か」との強い懸念と激励の言葉が、本学会の年会に新しい風を吹かせるべく実験的な試みを行う契機となった。本年会は会期2日目の時点で、招待者以外の参加者だけで9500名以上を数える盛況となっている。参加者の内訳をみると、事前登録の情報では本学会会員が53%、生化学会会員が26%、協賛学会会員が14%、それ以外(非会員)が7%となっている。協賛学会の中では特に日本RNA学会、日本癌学会、日本細胞生物学会、日本生物物理学会、日本蛋白質科学会、日本薬理学会などからの参加者数が多くなっている。一般演題数を2年前の生化学会との合同大会BMB2015と比べると約300演題増となった。一方、企業の展示・広告・ランチョンセミナーに関しては全体的な減少傾向が続いており、本年会でも関連する学会の数に出展数が比例するという結果にはならず、非常に苦心した。年会予算の7割を企業の協賛金でまかなっている本学会の年会にとって、企業との関係も含めた運営の仕方が今後の検討課題となる。
 篠原年会長より参加者および運営関係者への謝辞が述べられた。

6.第41回(2018年)年会長挨拶
 石野史敏第41回年会長より2018年の年会開催企画案について報告が行われた。

・会期:2018年11月28日(水)~30日(金)
・会場:パシフィコ横浜

【年会開催コンセプト】
 テーマは「日本からオリジナリティーを発信しよう!」。日本の浮世絵がフランスの印象派やそれ以降の画家に大きな影響を与えたことはよく知られている。科学の世界でも、日本人の発想力を生かした仕事を世界に向けて発信することは、グローバリズムが進む世界においても価値のあることである。昨今、研究費獲得の圧力が強まる中、学問の原点に帰って「自らの好奇心を追求する研究を深めて発信する」 機会にしてほしい。
 運営面ではミニマムな予算でどこまで充実したサイエンスプログラムを楽しめるかに挑戦したい。研究者をエンカレッジすることが最も重要な目的であり、本年会ではディスカッサー制度を導入し、特に若手のポスターでのディスカッションの盛り上げを重視したいと考えている。
 なお、本年会では夏の演題登録の締切延長を行わない方針である。これは締切を厳守するよう指導されるべき学生の教育上も宜しくないという指摘を受けたためである。Late-Breaking Abstractの受付は行う予定である。

7.第42回(2019年)年会長挨拶
 佐々木裕之第42回年会長に代わり、深川庶務幹事より2019年の開催概要について報告が行われた。

・会期:2019年12月3日(火)~6日(金)
・会場:福岡国際会議場、マリンメッセ福岡、福岡サンパレス

  コンセプトとしては、歴史的に大陸との交流拠点であった福岡での開催であることとも関連付けて「異分野との交流」「未知との遭遇」などのテーマ案を検討中である。
 本学会の年会では、例年、開催年の3月頃までワークショップの企画を募集しているが、それでは海外演者を招聘するのが難しくなることもあり、やや募集開始を前倒しにして2018年11月頃から2カ月程度、企画募集を行うよう計画している。また学生向けのレクチャーセッションなどを鋭意企画中である。
 また、本年会の運営は(株)エー・イー企画に依頼したが、企業展示/協賛に関係業務については日本コンベンションサービスに委託することとした。

8.第43回(2020年)年会長挨拶
 上村匡第43回年会長より2020年の年会開催方針について報告が行われた。

・会期:2020年12月初旬
・会場:神戸ポートアイランド

 生命科学の幅広い現象を対象として、研究者自身が重要な疑問を探していくボトムアップ研究を重視し、基礎を究める研究をすることを信条としている本学会にとって、実を挙げる年会を開催できるよう心がけたい。

9.林議長より閉会の挨拶があり、第40回総会が終了した。
 

上記、平成30年度通常総会の議決および確認事項を明確にするため、この議事録を作成し、議事録署名人はここに記名押印する。

平成29年12月7日

特定非営利活動法人日本分子生物学会
平成30年度通常総会

議    長  林   茂 生

議事録署名人  杉 本 亜砂子

議事録署名人  篠 原   彰